ひきはがされる時
季節の取り分というものがる
きちんと払うべきものはもっていかれる
思いきり遊んだ夏には
支払うべき利息さえある
秋はその利息はもちろん
元金さえごっそりと
ふところの底まで手をさしこみ
ねこそぎその取り分を
持ってゆこうとした。
しばし待たれよ
僕にだって少しの元手を
残してはくれまいか?
またくる年の
支度金として
いくばくかのものを
置いていっても罰はあたるまい。
うんにゃ、そうは行かんとよ
わしにはわしの暮らしというものを
立ててゆかねばならぬ義理がある
つまらん女房子供にだって
暮らしてゆく権利がある
やつらにとって、このわしの
稼ぎが唯一の頼りだと
どうか知ってくれたまえ
お気の毒だがここのところ
ちいと我慢をしてもらいたい。
そう言って秋は
あるだけ持っていってしまった
後に残るは寂しげな
季節の爪あとのような
ねこそぎはがされた
時の姿であった。
by amselchen
| 2008-10-30 04:35
| ZD25 Pancake