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アムゼルくんの世界 Die Welt des Amselchens 

陽射しはもう春

重く垂れ込めていた黒い雲がきれいさっぱりと失せて、春を思わせる陽が射す日が続いている。そのためか朝晩は冷え込む。

それでもやはり陽が照ることは何よりもありがたい。

鬱陶しい冬の暗さと春の輝かしさ、その季節の劇的な移りようは高緯度地方独特なものだろうか。

この地での暮らしを重ねるたびに、当地の人々との共通のメンタリティが徐々に自分の中に形成されてくるのが感ぜられる。


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ある土地の気候と文化が歴史的につくりあげたその土地の独特の雰囲気がある。

それを<風土>と和辻哲郎は定義した。

人は風土の中で生きる、その風土がつくる文化と社会のなかで暮らす、ゆえに人と土地との結ぶつきは、人というものを考えるとき、いつも意識されていなければならない。

書物にそう書いてあることを、なるほどと理解するのと、実際にことなる風土にすんで実存的に経験するのでは、やはり大きな隔たりがある。

そしてそのような経験をひとつひとつ積み上げることが生きるということなのだと、来独してそろそろちょうど二十年目をむかえてしみじみと感じている。


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森有正のいった<経験>というものをやっと真の意味で理解できる地点にいたったことを知る。

若い自分にはただ想像するだけだったその意味がわかった、それでけでも生きてきた価値があった、とも思う。

さてこれからはどんな地平が開けてくるのだろうか、齢を重ねるとはまた愉しみなことである。
by amselchen | 2009-01-30 03:24 | Summicron-R 50