木々は光を浴びて
森有正については、このブログでも何回も取り上げました。わたしが欧州へ来る前、いやそれどころか、高校生で漠然とフランス文化に対する憧憬をもっていたころから愛読してきた作家だからです。
ここで作家という定義を<物書き>あるいは<著述家>としておきます。森の場合はむしろ哲学研究家、思想家と捉えるのがフツウでしょうが、わたしは言葉のほんとうの意味での作家と思い続けてきました。
その著作集に『木々は光を浴びて』という一冊がありました。いまから見ればかなり戦後思想のパラダイムにとらわれて、ものの見方が偏っているように感じます。
しかし旧約聖書<創世記>の一節からとられた本のタイトルの美しさには幼いわたしはすっかり惹きつけられていたものでした。
「第三の川のチグリスと第四の川のユーフラテスは アッシリアの東部を ゆるやかに流れていた。
エデンは 世界の全ての川の源流であった。
木々の緑は 降りそそぐ光をあびて 枝もたわわに実を結び エデンは楽園であった。」
というものです。
聖書、とくに旧約はいくつかの民族の神話を集めたものでしょうが、たしかに神話的な懐かしさに満ちた美しい描写ではないでしょうか。
わたしが来独して初めて住んだ街は、その中心部にプラタナスとマロニエの並木にはさまれた運河のある街でした。わたしと家内はよく夏の暮れない夕べ、徒歩でそこまで散歩したものでした。
今その街を離れてくらす家族とって、それはエデンとは呼べないにしても、わたしたち夫婦二人にとっては忘れることの出来ない場所ではあるのです。
その並木は二十年がたって大きく成長したように見えます。そして今もかわらず光を浴びて輝いているのです。人も、とくに内面的豊かさが、そのように育つものであることを祈るばかりです。
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by amselchen
| 2010-04-17 07:16
| Ai Nikkor 35/2